日本画像データベース
(Japan Image Database: JAIDAS)


  川村宏(東北大学理学部附属大気海洋変動観測研究センター)
  1. はじめに

     東北大学理学部大気海洋センターでは、東北地方を中心とした約1000km四方のAVHRR/NOAA衛星の画像を毎日作成し、東北大学大型計算機センターと共同で利用者に公開している(川村、松沢、1990; 川村、1993; 工藤ら、1993)。1990年4月以降の毎日について、ほぼ99%の確立で衛星画像が登録されているので、現在では全国の研究者から月に4−500件の利用がある。
     作成開始から4年以上たって、TIDASのシステムも落ちついたので、その経験を生かし、TIDASの西日本版の作成を始めることとなった。それとTIDASを合わせて、日本画像データベース(Japan Image Database: JAIDAS)として公開しようとするものである。1994年4月から開始し、公開している。JAIDASの利用の詳細は、東北大学大型計算機センターへお問い合わせ願いたい。

  2. 西日本画像の作成と日本画像データベース(Japan Image Database: JAIDAS)

     毎日の西日本画像の作成には、朝方に日本付近を通過するNOAA衛星の画像を用いている。現在は、NOAA12号である。TIDASは、昼に通過するNOAA衛星データを利用している。西日本画像の作成に朝方に通過するNOAA衛星のデータを利用する理由は、受信局との位置関係にあり、観測機会が多い方を選んだ。1週間に一度程度は西日本画像が作成できない日がある。その理由は、画像化対象域が受信局からの距離が大きいことである。

    図1 可視チャンネルの西日本画像の例。 図2 赤外チャンネルの西日本画像の例。 (この辺に図1、2を挿入)

     西日本画像は、画像中心(31.0゜N, 133.3゜E)、画素サイズは画像中心で1.1km、メルカトル図法により作成している。画像は、1024x1024ピクセルで構成されている。中心の緯経度を除いて、画像の規格はTIDASと同じである。図1と図2に、1992年4月17日について作成した西日本のch.2とch.4の画像を示す。中部日本から沖縄までの範囲が画像内にある。一部韓国が入っている。日本の国土の形状の故に、南に広大な海域を含んでいる。この日は雲が無く、沖縄諸島を含めた西日本の全体が画像において確認できる。鹿児島の桜島からは噴煙が上がっている様子が観察できる。赤外画像(図2、黒いほど高温を表す)に注目すると、都市部や平野で山岳部より高温になっていることがわかる。海域では、沖縄の周辺は黒く、高温であり、北上するにしたがって温度が降下していくことがわかる。また、九州・四国の南の海域に黒い帯が見られるが、これは黒潮である。周囲に大小様々な渦が見られる。
     東北大学理学部大気海洋センターでは、この画像を原則として1日1シーン(可視、赤外画像の2枚)、朝方の衛星通過直後に作成し、その日の夜に大型計算機象整に学内ネットワーク(TAINS)により転送している。大型計算機センターでは、即時に画像データベースに登録している(川村ら、1994)。
     この西日本画像と従来から作成を続けている東北画像のデータのセットを合わせて、日本画像データベース(Japan Image Database: JAIDAS)と名付ける(川村ら、1994)。JAIDASのなかで、東北画像はJD_E(東日本画像)、西日本画像はJD_Wと呼ばれる。JD_Eの可視画像を図3に示す。

    図3 可視チャンネルの東日本画像の例。 (この辺に図3を挿入)

     JD_EとJD_Wで日本のほぼ全域をカバーすることとなるが、1部かける部分がある。特に北海道の先端部が残る。これは、最初の東北画像(東日本画像)を作成した際の領域選択の結果である。しかし、今回画像化領域の範囲を変えてそこを含むようにはしなかった。これまで作成してきたデータベースとの統一性を損なわないためである。大型計算機センターの汎用大型計算機ACOSにアクセスし、JAIDASを呼び出せば後はメニューに従って検索とデータ抽出が可能となる。抽出後は、ACOSのディスクからFTPなどにより研究者サイトへの転送が可能である。

  3. 衛星画像データベースについて

     全国で初めての本格的な衛星画像データベースを作成して4年間が過ぎた。JAIDASの特徴を列記してみると、1)利用しやすい、2)無料である、3)利用上の制限がない、といったことであろう。最後の項目3)であるが、例えば、”JAIDASを利用した場合は、その旨論文に明記すること”などといったことである。それをJAIDASでは要求していない。もっとも、JAIDASデータの質を論文投稿時に問われた際に、利用者が困ることがないように、どのような処理が行われたかをいつでも答えられるような準備は行っている。NOAA衛星データの受信から処理について、その質を維持し続けることについては、責任を持って行っているつもりであり、そのような裏付けの元にデータの提供を行っている(Kawamura et al.,1993a,b)。少しずつ変化していく衛星の状況をおさえながら、処理系を調整して、提供データの質を維持することを1年以上の長期にわたって行うことは、実はそれほど簡単なことではない。
     衛星観測データを利用しやすい形で提供することで、多くの新しい利用者を獲得して新しい研究の可能性が開けることについて,TIDASは十分な証明を与えたように思う。その意味でTIDASあるいはJAIDASの役割は済んだのであろう。利用者がある限り、また作成の側に余力がありるかぎりは、このようなデータ提供を行っていくつもりではある。しかし、そのような利用者が多数を占めるのであれば、将来何らかの形で定常的な提供を行えるような体制が組まれるべきであろう。衛星観測データの需要の増加と共に、そのような研究の基盤整備が必要であろう。


参考文献
川村宏
東北画像データベースと画像データの概要、SENAC、Vol.26、48-56、1993。
Kawamura,H., S.Kizu, F.Sakaida and Y.Toba
The NOAA-HRPT data receiving system in the Center for Atmospheric and Oceanic Studies in the Tohoku University, Tohoku Geophysical Journal (The Science Reports of the Tohoku University, Series 5), 36, 89-102, 1993a.
川村宏、工藤純一、木津昭一、根元義章
”日本画像データベース(Japan Image Database)”、SENSC、 27(3),pp7-13,1994
川村宏、松沢茂
東北画像データベース(Tohoku Image Database: TIDAS)、SENAC、Vol.23、No.4、 127-147、1990。
Kawamura,H., F.Sakaida and S.Kizu
The AVHRR data processing system in the Center for Atmospheric and Oceanic Studies in the Tohoku University, Tohoku Geophysical Journal (The Science Reports of the Tohoku University, Series 5), 36, 103-114, 1993b.
工藤純一、安倍正人、根元義章、川村宏
TIDAS運用システムの構築、SENAC、Vol.26、57-69、 1993。