ETV2002

検証・シベリア森林火災
〜地球環境への痛手〜

NHK教育テレビ 2002年12月 2日放送

 

 

 この夏、シベリアで頻発した森林火災。今年は10年に一度の当たり年と言われています。地球温暖化に伴い年々増加する森林火災。それによって、地球環境に関するひとつの定説が崩れつつあります。これまで地球上の酸素の有力な供給源と考えられてきたシベリアの森林が、いまや二酸化炭素(CO2)をはじめとする温暖化ガスの有力な供給源と化しているというのです。

 

 

 「地球の肺」と言われてきた森林。地球環境に果たすその役割はどのように評価されるのか?北海道大学低温科学研究所を中心とする国際共同研究を通して、世界の大森林の危機的状況を描き、その予防策と日本に何ができるかを考えます。

 

 

 この夏、ロシアの首都モスクワを異常なスモッグが覆いました。大気中の二酸化炭素濃度は環境基準の2。3倍。視界不良のため、空港はたびたび閉鎖されました。都市機能を麻痺させたこの煙、発生源は郊外の森で起こった森林火災でした。

 

 

 今、世界各地で森林火災が猛威を振るっています。中でも、焼失面積の半分近くを占めるのが、シベリアのタイガと呼ばれる北方林です。多い年には、日本の面積の3割以上にあたる森林が火災として失われると考えられています。

 年々増加する森林火災、それによって、地球環境に関する一つの定説が崩れつつあります。

 

 

 広大な面積を占めるシベリアの森林は、地球上の二酸化炭素の有力な吸収源であると考えられてきました。ところが、このままのペースで火災が増加すると、二酸化炭素の排出量が吸収量を上回り、逆に地球温暖化に拍車をかける恐れが強まってきたのです。

 

 

 5月に始まった今年の森林火災は、その後4ヶ月近くもくすぶり続け、久々の雨を見た9月まで完全に鎮火することは有りませんでした。春先から続いた異常な高温と乾燥、それがこの30年間で最悪と言われた火災をシベリアの森林にもたらしたのです。

 宇宙からの目がこの夏の森林火災の一部始終を捉えていました。

 

 

 東北大学の東北アジア研究センターには、アメリカの気象衛星ノアからシベリアの衛星画像がリアルタイムに送られてきます。

 

 

 工藤純一教授の研究室では、この画像から特定の温度と色の部分を抽出し、火災を自動的に検出するプログラムを作成しました。その結果、広大なシベリアのどこで火災が起きているのか瞬時に把握することが可能になったのです。

 研究室では、この画像から毎日の火災面積を割り出し、この夏、どのくらいの面積の森林が火災によって失われたかを算出しました。

 

 

 その結果、5月から8月までの4ヶ月間に失われたヤクーツク周辺の森林の面積は14000平方キロメートル。シベリアのごく一部に過ぎないこの範囲で、東京都の面積の7倍もの森林が失われたのです。

 

 

工藤純一教授(東北大学東北アジア研究センター):「二酸化炭素の吸収源であると考えられてきた森林が、逆に発生源であるということが明らかになったわけです。ロシアの森林に対してやはり、なにかをしなければならないのです。」

 地球上の森林のおよそ3割を占めるシベリアのタイガが地球環境に果たしてきたその役割を守ることができるのか。最新の研究を通して、シベリアの森林の危機を救う道を探ります。

 

 

福田正己(北海道大学教授) :「広いシベリア、どこで火災が起こったかとても検出できません。そこで、宇宙の目を使います。アメリカの衛星ノアで受信した画像をロシア科学アカデミーの共同研究者のところに送られます。それがさらに東北アジア研究センターに衛星回線を使い伝達されます。それをアラスカ大学にある国際北極圏センターに送られ、刻々と変化する様子を解析し、現地の消火活動を行う人々にGPS、衛星電話を用いて的確に指示を出します。それにより、火災による損害を最小に収めるシステムの構築を目指しています。」

 


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